すべての教室にPCを

−自律的な情報リテラシーの伸長−

中野 由章
nakano@nishiko.ed.jp

三重県立名張西高等学校
http://www.nishiko.ed.jp/

  1. 本校の概要
  2.  三重県立名張西高等学校は、三重県の西端、奈良県に程近い名張市の高台に位置し、普通科、英語科、情報科の3科を擁する、今年で創立15年目となる学校である。
     情報科においては、本校創立以来、一貫して「高度情報処理技術者の育成」を教育目標に掲げ、その内容は、2003年度からの新学習指導要領における専門教科「情報」の一部を先取りしたようなものとなっている。
     普通科や英語科においても、情報科併設校という利点を活かし、やはり2003年度からの新学習指導要領における普通教科「情報」を先取りしたと言える情報系選択科目を開設している。

  3. カリキュラム
  4.  情報科では工業科必履修科目の他に、「ハードウェア技術」、「ソフトウェア技術」、「プログラミング技術」、「コンピュータ応用」、「工業英語」、「情報システム」、「情報リテラシー」等を置いている。「情報システム」では、倫理・法制度・標準化・産業社会と情報化・表現技法等の教育を行っている。「情報リテラシー」では、ワープロ・表計算・プレゼンテーション・画像処理等に関するより高度な情報活用能力を伸長するための教育を行っている。
     普通科の生徒も情報科目を履修できるよう、選択科目に「情報科学I」という学校設定科目を置いている。主に、ワープロや表計算、プレゼンテーションや画像処理といったコンピュータリテラシー教育を行っている。

  5. 情報教育環境と基本コンセプト
  6.  本校における情報教育環境は、校内LANを中心とするものとし、その利用については生徒実習にとどまらず、広く校務処理に教職員が利用することを前提としている。そのためにLANは実習室に限らず、およそ生徒や教職員が常駐するであろう部屋すべてに拡張している。
     情報システムの利用促進の観点から、多少の利用目的逸脱は許容するが、セキュリティ対策については利便性が犠牲になったとしても、考えられる最高の安全性を追求している。

  7. インターネットとの接続
  8.  Linuxサーバを、CATVを利用した常時接続環境としている。通常、CATVによるインターネット接続の場合、IPアドレスはCATV業者のDHCPサーバより動的に割り振られることが多い。本校の場合は特定のIPアドレスに固定するオプションを追加契約したことにより、独自ドメインnishiko.ed.jpを取得し、独立サイトとして運用することが可能となった。高速回線でインターネットと常時接続されたことにより、同時に大人数でWWWの閲覧を行ってもストレスなく利用できる上、学校から直接ホームページを公開したり、また電子メールユーザを自由自在に設定することが可能となっている。

  9. すべてのHRにインターネットPCを
  10.  授業等の教員監督下ではなく、生徒が自由に利用できるPCを設置することは、生徒の情報活用能力を向上させ、情報倫理の実践・会得のためには必須であると考えた。
     ホールや図書館等、共用スペースにPCを配置している学校は少なくないが、本校においてそれに倣えば、業間等少しの空き時間があったとしても、PCのある場所までの往復に要する時間を考えると非常に利用し辛くなってしまう。そこで、生徒がPCを利用するために、わざわざそれがある場所まで行かなくても、ちょっと使いたい時にいつでも使えるためには、生徒の居室にPCが設置されていなければならないと考え、全HRにiMacを1台ずつ配置した。これにより業間や放課後等に生徒が自由にPC、とりわけインターネットを利用することができるようになった。また、少し控えめな生徒や消極的な生徒も、自分の居室にあれば空いているときに利用したり、またクラスの仲間同士で教え合うということが期待できる。
     導入するPCは、基幹サーバがWindowsNT Serverで運用されているので、そのままでは業務系にアクセスできないよう非Windows系とし、データの持ち出しや持ち込みを困難にするため、FDDのないiMacを採用した。また、教室が狭くならないよう4分の1円形のテーブルを用意した。
     LANについては、既存のラインから延長する形ですべての教室に引き通した。

  11. HRのiMac利用調査結果解析
  12.  以下に、数箇月の試験運用の後に行った利用状況に関するアンケート結果から、現状の分析を行ってみる。アンケートは全校生徒を対象とし、有効回答は約980人分であった。
     「HRのiMac利用状況」については、4割の生徒が利用しているものの、まだまだ利用率が低いので、今後底上げを図る施策を講じる必要を感じている。
     「PCに対する知識・技能」については、4割の生徒がHRにiMacが導入されたことにより、いくらかの知識・技能が向上したと答えている。情報活用能力の伸長という目的の一部は実現できていることになる。
     「自分専用のPC」と「自宅でのインターネット利用」については、殆ど同じ回答傾向にあり、約半数の生徒が欲しくなった・利用したくなったと答えている。また2割の生徒が既に自宅でPCを所有し、インターネットを利用していることがわかった。HRにiMacを導入したことにより、PCやインターネットに対する興味・関心を喚起するという点では効果があったといえる。
     「Webページのフィルタ」については、現在、三重県教育委員会が設置しているコンテンツ・フィルタを利用しており、これにより学校側が教育上望ましくないと考えるページを制限している。但し、完全なものではなく、漏れも沢山あるが、我々の意図するところを生徒に理解させたいと考えた。また、アクセスログを採っていることも生徒に説明してあり、これらを理解した上で利用するのであれば、余程のことがない限り特に強い指導を行うことを避けている。このフィルタについてあった方がいい・どちらでもいいを合わせて8割の生徒が我々の意図を理解しているとみることができる。
     「インターネット上で利用した情報」については、圧倒的に趣味のページが多く、進路情報がごく僅かであったのは予想外のことで残念であると言わざるを得ない。ただ、普段早朝・放課後等にHRを覗くと、進路情報にアクセスしている生徒がかなりいるように感じる。この数値は最もよく利用したインターネット上の情報は何かという問いかけであり、それを人数で出してきている。よって、趣味のページに次いで進路情報を利用している生徒も相当数いるものと考えられる。また、特定の生徒が頻繁に進路情報にアクセスしているということも考えられる。
     「スキー研修のページ」は、2年生がスキー研修に行っている間、現地からその様子の写真データを伝送してもらい、毎日学校でそれをWebページ化して校内で公開した。このことは殆ど生徒には公知しなかったものの、HRからインターネットを利用しようとしたらこのページの存在に気づくようなかたちにし、HRのiMacから生徒が日々情報を積極的に取り入れようとしているのかどうかの探針とした。約半数の生徒がその存在を知っていたということは、予想以上にHRのiMacから情報を入手していると言える。
     「HRやクラブのページ」については、1割の生徒が作ってみたい、4割の生徒がどちらでもないと答えている。興味はあるものの、作り方がわからない、労力がかかりそうといった生徒の捉え方が感じられる。
     「SHRの連絡」を紙ベースからWebベースに置きかえることの是非について、9割の生徒が紙での掲示を希望している。その反面、半数の生徒がWebベースも受け入れると回答しており、今後どのように情報のペーパー・レス化を進めていくべきか、一工夫必要であろう。
     「HRにiMacがあった方がいいか」については、殆どの生徒が肯定的に捉えているが、ごく少数ではあるもののない方がよいと思っている生徒もいる。その理由を尋ねてみたところ、教室が狭くなった、そのお金を別の用途に使って欲しいという意見が大半であった。

  13. その他の教育実践例
  14.  アメリカ合衆国をはじめとする英語圏の学校の生徒との間で、電子メール文通を定期的に行うことにより、英語表現能力の向上や情報交換を行っている。
     WWWを利用したものとしては、各種の調べ学習を行ったり、地域で調査研究したデータの加工・発信を行っている。これは日本語によるものに限らず、外国のサイトを利用したり、また英語版のページを作成することによって、英語力を付けることにも寄与している。
     教職員もHTML形式の教材を開発し、生徒に提供している。このことにより、WWWブラウザさえ動けば、どんな端末からでも教材を利用できる。またログを調査することにより、生徒の学習軌跡を追跡できるため、生徒にとってより効果的な学習方法の研究を進めることにも役立っている。
     さらに、シンガポールのタングリン中等教育学校とインターネット交流を行っているが、この中でビデオ会議を取り入れている。リアルタイムで意見の交換を行うことにより、異文化交流、英語学習を進めることに役立っている。

  15. 今後の課題
  16.  今後更に、HRのiMacについて、実際の利用状況を見ながら、その活用方法についての研究を進めていきたいと考えている。
      また、現在物理的に1つのネットワーク上で学術系と業務系が混在しており、IPアドレスとユーザ認証によりその区別を行っているが、より校内LANのセキュリティレベルを高めるため、制御ハブ等を用いて業務系の保護を行う必要があると考えている。


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